祝・再放送!幕末大河ドラマで一番推したい『八重の桜』

Category: 時代劇 2018年10月15日 yae1

いいドラマは見たその日のコンディションが左右されるくらい感情を揺さぶってくるものですが、『八重の桜』は間違いなくそんなドラマ。特に会津戦争までを描いた前半は名作。毎週、正座で見ながら泣いてました。

鑑賞後は居ても立ってもいられない…! と新幹線のチケットを即買いして、舞台である福島県会津へ思わず行ってしまうほど熱を上げたドラマです。

そんな八重の桜が放送から5年経ち、総集編の再放送が決定!! 拍手喝采!
SNS上でファンが続々と待機し始めている様子から、記憶に残る良作だったことがうかがえます。

さて再放送を前に高まるパッションの行き場がないので、八重の桜の何がそんなに良かったんだってのをつらつら書きます。

NOTスイーツ大河。骨太の戦争ドラマ

この作品の主人公は、綾瀬はるか演じる山本八重。佐幕派の雄・会津藩の武士の家系生まれ。
女性でありながらスナイパー銃を持って戦地に立った幕末のジャンヌ・ダルクです。明治以降は教育者、従軍看護婦として活躍しました。

大河ドラマで女性が主人公になると脚本によっては「スイーツ大河」と揶揄されることもあります。実際に主人公が関わっていないと誰もが知る史実のシーンで出しゃばる、やたら恋愛シーンが多いとそういう傾向になりがち。

ところがどっこい、八重の桜は「スイーツだと思ってごめんなさい」って言いたくなるくらい骨太でした。

とにかく会津戦争のシーンは圧巻の迫力。砲弾を受ける鶴ケ城のCGが凄まじい恐ろしさを伝えてきます。
何よりすごいのが、会津戦争を一ヶ月に渡って放送したこと。実際に会津では約一ヶ月の籠城戦が繰り広げられたので、視聴者は史実に近い緊迫した一ヶ月を体感しました。はぁ…見てて辛かったなあ…

家老・西郷頼母の家族20名以上が集団自決するシーンや「生まれ代わる時はまた、会津で」とお互いの介錯をする神保内蔵助と田中土佐。
(これ、1986年の名作ドラマ『白虎隊』にも出てきたセリフだからオマージュなのかなと思う)

ドラマの序盤で延々と続く豊かな田畑と雄大な磐梯山、野原を馬で駆ける藩士たち、きらきらと散る桜の麓で語らう人々など、会津の美しい光景がじっくり放送されてたこともあって「あの美しく豊かな会津が…!」と涙なしには見られない一ヶ月でした。

その中でもスペンサー銃片手に戦地に乗り出す八重は光明。「ヨッ待ってました!」って声かけたくなるくらいかっこよかった。

幕末史をさらうには丁度いい多角的なまとめ方

会津戦までを描いた前半は、会津を主軸に薩長をはじめとした各藩、そして天皇家と徳川家の動きを多角的に描いています。

それぞれの思惑、正義、損得勘定があったんだってのが見えやすくて「これを見れば幕末の流れはなんとなくわかる」ストーリーになっているのがすごい。
(前半までが素晴らしい脚本、スピード感なだけに後半:明治編の失速が際立ってしまうくらい)

さらに東北の会津にいる八重を、無理矢理京都での歴史事件に関与させませんでした。これも最大のグッドジョブポイント。関わっていない人が出しゃばると訳わかんなくなるからね。
八重が穏やかに過ごす会津と不穏な京都のコントラストが強くなり、そのため会津戦争の凄惨さが余計に際立ちました。「戦争は嫌だ」ってセリフが乱立するよりも身に迫る恐怖があった。

そして敵側である薩摩や長州の動きもきちんと、しかも魅力的に描いているのが良いですよね。特にモニカ吉川晃司演じる西郷隆盛がまさに「漢」でした。

明治になってからの西南戦争で会津の山川大蔵が「この国は会津人が流した血の上でできあがっている」と迫ったのに対し、「それを忘れたことはない。おいが皆を抱いて逝く」と言う西郷。
山川のセリフを放送したのも英断だし、それに対する西郷の器の大きさも伝わってくる。こりゃ倒幕する人の器だわ。

憑依したキャスト陣

1.ダントツで綾野剛/松平容保

この骨太脚本を更に共感できる世界観に作り上げたのが言うまでもなくキャスト陣。

特に綾野剛の松平容保は大河史上に残るキャスティングだと思う。演じるキャラクターを理解してるとか、分析してるとか、そんな粋を超えて、憑依してました。作品史上最高の松平容保。

爽やかルックスと重圧に苦しむ様子は「殿、おいたわしい…」と嘆きたくなるような可憐さ。しかも実際に残っている容保の写真と似ていること似ていること。

そして何かがのしかかっているような、一種の鬱状態のような言動。きっと当時の容保はこんな感じだったのかもと思わせる演技。

「ほとんど無呼吸でした。顔が真っ赤になって血管が浮いてる」と綾野剛本人が言うほどの入れ込み具合。
井伊直弼と話した夜に、片目にだけフッと浮かんだ涙。
孝明天皇の前で打ち震える姿。
江戸城登城禁止を伝えられ呆然と家訓の一節「大君の義…」とボソボソ呟くシーン(しかもアドリブらしい。完全に憑依してる)。

これには松平家のご子孫が「綾野剛に松平容保が憑依していた」と太鼓判を押しています。

放送当時もTwitter上のタイムラインが「と、殿ーッ!!!」といたわり悲しむ声で溢れてました。
(放送後の21時から別局で放送してた『空飛ぶ広報室』で綾野剛が幸せそうな役だったからそれに救われてた人も多数)

2.ムカつくインテリロボット小泉孝太郎/徳川慶喜

歴代大河ドラマの中の徳川慶喜で、一番ハマってたのが小泉孝太郎だと思います。
目が笑わないのに口角上がってる感じとか、出す言葉がロボットっぽいとことか、裏ですごい計算高そうなところが慶喜っぽくて良かった(褒めてる)。

3.ここでも沼に誘い込む長谷川博己/川崎尚之助

八重の最初の旦那様、ハセヒロ。どの作品でも沼に引きずり込んでくるいい男なんですが、この作品でも本当にいい男。

自立心の高い八重を「私は鉄砲を撃つおなごをめとった。世間並みの奥方など初めから望んでいない、あなたはあなたであれば良い」と、当時の価値観とは真反対の感覚で認めてくれる。結婚式のシーンでは八重に紅を贈りそれを指で塗ってあげるシーンが趣あって、しっとりとしたいい画でした。美しい映像過ぎて脳裏に焼き付いてる。

このハセヒロの恋敵が玉山鉄二演じる山川大蔵。幕末でも明治でも活躍する言わずと知れた会津の有能偉人なんですが、八重への好意はまったく気づかれないまま終わる恋愛面では不憫キャラとして描かれてました。

京都へ旅立つ日にやっと言えた告白が「会津を想う時には、きっと真っ先に八重さんの顔が浮かぶ。あなたは、会津そのままだから。」とめっちゃ美しいセリフ。

テレビの前で視聴者は「ぎゃー!」となってるのに、へ〜って感じで流す綾瀬はるか。
幕末期は山川浩(ひろし)と名乗っていたため、SNS上では「ヒロシです…」と多々呟かれるほどの不憫オーラが漂ってました。
もちろん恋愛以外のシーンはめちゃめちゃ男前だった。

鳥肌の立つ美術

八重の桜推しポイント、最後の一つが美術。個人的に大河ドラマ史上一番美しいタイトルバックだと思うのが、八重の桜です。
12組のアーティストが1ヶ月ごとに制作を担当するという、NHKでも前例のないオープニングは1年見続けても飽きないものでした。美しい映像と、坂本龍一のやや悲壮感のある曲のマッチングは鳥肌モノ。

更に赤松陽構造のロゴとスタッフ名を書いた文字が美しい。被災地の桜と重ねた「折れない枝」をテーマにしたそうで、竹をほぐして穂先にした筆で書いた文字は細くも力強くて大好きなアートワークです。


気づけば3000文字も書いていた「ここが好きだよ八重の桜」。総集編もいいけれど、じっくり一話ずつの再放送もしてほしい…!

フリーランスクリエイター。デザイン、イラスト、写真などやってます。 トダビューハイツ大家。 落語は柳家喬太郎師匠、時代劇は『江戸を斬る』『鬼平犯科帳』『清水次郎長』『一心太助』あたりが好き。
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