春風亭一之輔に東出昌大が斬りこむ! 『落語ディーパー!』は新しい落語分析テレビ【落語コラム】

Category: 落語 2017年8月4日 deeper00

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)師匠、相変わらず引っ張りだこです。7月末からNHKで『落語ディーパー!~東出・一之輔の噺(はなし)のはなし』が始まりました。

落語好き俳優・東出昌大さんと一緒に落語を分析。人気の若手・柳家わさびさん、柳亭小痴楽(りゅうてい・いちのすけ)さん、立川吉笑(たてかわ・きっしょう)さんもレギュラー出演。
しかも! スペシャルゲストには柳家花禄(やなぎや・かろく)師匠が!! これもう、落語ファンにはヨダレものでしょ。

以前一之輔師匠小痴楽さんの記事を書いた身としては「まさかのテレビ共演してるよ!! これ毎週観れるなんて卒倒!!」って感じです。

東出昌大の異常な落語知識と切り込み隊長っぷり

この番組は、毎週ひとつの演目について出演者が話し合います。

落語家が芸について語る様子って滅多に見れません。落語をする上での工夫や苦労、コツを語るのは野暮。苦労をお客さんに見せてはいけない。ひたすら芸に打ち込む。
そんな気概を落語家さん達からは感じます。

だけど「そこのとこ、本当はどうなんです?」って思っちゃうのも落語ファンの性。そんなウズウズを、切り込み隊長・東出昌大さんがガンガン聞いてくれる番組です。

正直、何かしらのコンテンツを特集するテレビ番組に呼ばれる俳優やアイドルって、「知識がまだそこまで無い状態」もしくは「これからファンになります!」状態の場合が多々あると思うんです。
ところがどっこい、東出さん、やばい。すらすらと落語家の名前、演目、落語家が残した言葉が出てくる。

その上で「この噺はなぜ此処が舞台なの?」「仕草にルールはある?」など、知っているようで知らないささやかな疑問をぶつけてくれます。

時には「落語家って派閥で仲わるいんですか?」なんて切り込み質問も。落語界の派閥争い、ググれば色々出てくるのですが…こうも真正面から、しかも落語家に聞く人、そうそういません。

この質問に対して「僕らの世代は無いですよ。派閥争いがあったのはもう亡くなってる上の世代でしょ」ってケロっと言ってのける柳亭小痴楽!
出たな! ギラつく江戸っ子落語家! 好きだ!

対して、さら〜っと、ふわふわ〜っと質問に答えていく一之輔師匠。「僕なんかはこう思うんですけどねえ、どうでしょうねえ。」ってあの空気感が、たまらなくゆるくて、これがまた師匠の魅力なんだよなあ。

そんな一之輔に対して「師匠にこんなに色々聞けることなんて無いので! 嬉しいです!」と時に質問し、時に盛り上げる若手落語家3人。
このような落語家同士の絡みを観れるの、「笑点」以外で初めてで、そわそわしちゃいます。

あ、東出さんだけでなく、華を添えるアナウンサー・雨宮萌果さんまでも落語研究会出身という、落語ファンでギッチギチに固まった番組ですよ。

ノウハウ共有して業界を発展させる落語はまるでIT

さて第一回目の放送で印象的だったのが「落語は血筋、流派、協会など関係無く、みんなで共有して残していく芸」と語られていたこと。
「噺って、師弟に関係無く誰にでも教われるんですか?」っていう言われてみれば不思議かも、な質問。

特定の師匠の元に弟子入りしながら、他の師匠にお稽古をつけてもらうって、考えてみれば業界全体で後輩を育てる環境が整っているってことですよね。先生がいっぱいいる。しかも選び放題。
これが江戸時代から続いてきた秘訣かあ、って感じします。ノウハウ共有して発展していくの、なんだかIT業界(とくにプログラマ)に似てるかも。

もちろん一概に共有しまくってきたとは言えないと思うし、ITとはベクトルが違いますが。技術が残るひとつの手段ですよね。

「落語は同じ演目でも落語家によって演じ方が違う」が分かる番組

もうひとつ、面白かったのが「頭の中に場面が描けたら、それを再現すればいい。それがその人の正解。」って語る一之輔師匠。「目黒のさんま」というお殿様が初めてさんまを食べる噺で「さんまを食べる様子ってどう演じるのか」という分析の節で放った一言でした。

そのさんまは大きいのか、炭がつくほど焼かれているのか、皮はパリパリか、どれほど熱いのか、串刺しなのか、お皿に置かれているのか、大根おろしの量は…

さんまひとつでこれだけの情報量があるんです。これを克明に頭に描いて、演じる。

ということは、人によって想像する「さんま」は違うわけで。

ゲームでも、ハードが違うとソフトも全然違ってきますよね?我々噺家はハードで、そこにさまざまなソフト(=演目)を差し込んだときに噺も変化するんです。

そういうところで、クリエーターの方たちに「あぁそういう手もあるのか」と共感してもらえたらうれしいですね。

NHK PR公式サイトより抜粋)

これは出演している柳家わさびさんが言っていた言葉。この通り、落語は落語家によって同じ噺がガラリと変わります。

この番組は、「ひとつの噺の同じ部分を、違う落語家が演じる様子」を見比べさせてくれます。「この師匠が演じるお殿様はヤンチャそう! だけどこの師匠が演じるのはとても威厳があるなあ」って、ひとめで分かります。

しかも、見比べ映像に使われるのは大名人の芸! 金原亭馬生師匠の落語が見れるなんて思わなかった〜!

以前放送されていた『落語THE MOVIE』よりはちょっとマニア向け番組になったのかな? って気もしましたが。落語家さんが考えていること、落語家同士の関わり、落語という芸がサクッと観れる番組で良かったです。これを落語家さんから引き出し、じっと聞きいる東出くん、高感度バク上がりです。

きっとカットされている部分も多くあるだろうから、どこかのタイミングでロング版観たいです! NHKさん!!

フリーランスクリエイター。デザイン、イラスト、写真などやってます。 トダビューハイツ大家。 落語は柳家喬太郎師匠、時代劇は『江戸を斬る』『鬼平犯科帳』『清水次郎長』『一心太助』あたりが好き。